下半身を鍛えるトレーニングやストレッチのお話のつづき。
認知症について
認知症高齢者数は2012年時点で約462万人(65歳以上の約15%)で、軽度認知障害(MCI)は約400万人。両方を足すと65歳以上の4人に1人が認知症とその予備群。2025年には700万人を超えると予想(65歳以上の約20%)で軽度認知障害(MCI)は約600万人。両方を足すと65歳以上の3人に1人が認知症とその予備群と予想されています。
認知症初期の「もの忘れ」と、老化による「もの忘れ」との区別は必ずしも容易ではない場合があるようです。
認知症初期での診断には、「何を知っているか?」のテストだけでは不十分で、「一定時間内に複数の仕事をどれだけテキパキさばくことができるか」などの前頭前野機能を調べることが大切だそうです。認知症と診断されても初期の軽度な場合は、トレーニングによって改善できますし、認知症でない人でも普段からのトレーニングは認知症予防になります。
では、前頭前野を中心とした大脳の活性化を図るにはどうすればいいのか?
まず、「読み」「書き」「計算」。毎日5分程度でもいいので、簡単な足し算や引き算をできるだけ早く解く。難しい計算をするより簡単な計算を早くすることが前頭前野の活性化が大きいそうです。新聞や本などは声に出して読む。声にだして読むことによって、読めない漢字があったりと、脳に対して失敗させることが刺激になります。
次に「人とお話をする」
家に閉じこもらず、できるだけ外に出かけ、いろんな人とお話することも効果があります。
最後に「頭を使う手作業」
料理や囲碁、将棋などが挙げられます。おかずがワンパターンになってくるのは要注意だそうですよ。しかし、作ってもらっている立場上
「最近、ワンパターンだね」
なんて言えません・・・。あなたなら、なんていいますか?
運動による認知症予防の効果
65歳以上の高齢者を6年間追跡調査した研究では、週3回以上、歩行や自転車、水泳などの運動をした人はしなかった人と比べて認知症の発症リスクが約3割減少した。
健常高齢者を有酸素運動とストレッチ郡に分けて1年間実施させた研究では、有酸素運動郡で海馬の容量が有意に増加した。
健常高齢者に30分間の運動を週5日実施させた研究では、アミロイドβの脳内発現が少なく、アルツハイマー病の発症リスクが低かった。
などなど、運動による認知症の予防効果が大きいことがわかります。ちなみにこのアミロイドβは脳神経細胞の老廃物で蓄積が続くと脳神経細胞先端部を傷つける物質です。
もう一つタウタンパク質という、脳神経細胞の中に蓄積し神経細胞そのものを死滅させる物質があり、この2つ蓄積によって引き起こされる脳神経細胞の死滅が認知症の原因とされています。
どんな運動がいいのか?
どんな運動をどれくらいすればいいのか?今回の講座で先生から教えていただいたのは
有酸素運動
ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などを
「楽」~「ややきつい」と感じる強さで30分以上 週3回以上
が理想的。
できない人は週1回でも習慣づけることが大切です。継続すれば筋力アップにより20分しか歩けなくても30分、40分と歩けるようになります。いきなり効果はでませんが継続することにより少しずつ実感できると思います。やらないよりやったほうが絶対にいいので、まずは自分のできる範囲で始めてみてはどうでしょう。
歩行速度の低下について
歩行速度の低下は筋力の低下です。この歩行速度の低下が認知症発症のリスクにつながることが分かり、認知症が進行すると歩く速度が遅くなるそうです
横断歩道を青信号で渡りきれない人は要注意。
では歩行速度低下を呼ぼうするためにはどうすればいいのか。
股関節の筋強化につながる「水平足ふみ運動」があります。太ももを水平まで持ち上げ、その場で足踏みを行います。バランスが悪い人は何かにつかまって、それでも難しい人はイスに座って行いましょう。
1日30回程度から始めて、なれれば回数と上げる速度を速くしていきます。「息切れ」や「動悸が激しくなる」、「多量の汗」、「筋肉がだるい」といった症状が起こったら終了。これも少しずつ、出来る範囲で習慣にしましょう。
ながら運動のすすめ
軽度認知症であれば、頭を使いながら行う運動で海馬の萎縮を軽減させ認知機能を維持・向上できることが示されつつあるそうです。例えば、友人と話しながらウォーキングする。計算やしりとりしながら歩くなど、頭を使いながら運動する「ながら運動」がいいようです。
いただいた資料の最後に記載されていた言葉。
・元気で長生きするために「片足立ち」や「立ちしゃがみ」「水平足踏み」等で筋肉や骨を鍛えましょう。
・「早歩き」や「ながら運動」で脳を鍛えましょう。
・スポーツやレクリエーション、食事会、旅行など、生活の中に「楽しみ」を作りましょう」。
・「出かける場所」や「友人」を多く作りましょう。
・「社会」とのつながりを維持することがとても大切です。
なるほど。一部耳が痛いところもありますが、実践していきたいですね。
編集後記
鶯先生のお話、とても楽しかったです。会場は笑声があふれていました。笑うこともいいんでしょうね。
今回の講演で一番よかったことは
「慣れは脳への刺激が少なくなる」
ということ。
例えば、右手をグーで左手をパーにします。グーは親指から立てていき10まで数えて、パーの手は親指をおっていき10まで数える。会場の受講生ではできる人とできない人がいました。このとき「できた人」は「できなかった人」に比べて、脳への刺激が少ないそうです。
他にも1,2,3,4,5と数を数えながら右手は△、左手は□を描くとか。できない方が脳にはいいそうです。
高齢者の方も若い方も、自分は大丈夫と思わずに、健康で楽しく過ごせるように備えましょう。軽度の認知証は改善する可能性があるので、家族に「あれ?」と思った症状があったら認知証検査をうけましょうね!